2008年03月04日 コメント (9)

自閉症の診断書をもらう。

モユルが自閉症だという診断結果自体は去年の9月に受けていたのですが、やっとそれらが文章で記されている書類をもらうことが出来ました。

ということで、自分の勉強がてら、内容を公開しちゃいます。え、良いのかって? うん、良いですよ(笑)。

注:各書類の個人情報や、具体的な記述は判読不能に修正してあります。僕が内容を適当に訳していますので、日本語での専門用語とは全く異なるかもしれませんし、適切な訳文では無い可能性が大いにある事をご了承ください。

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この書類は、先生の診断/見解書。障害手当を申請する際に添付する大事な書類。自閉症児向けの物ではなく、介護や世話が必要なハンディキャップを持った者だということを医師が記す証明書類です。

以下、書類の内容。
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-診断期間
2006年12月から2007年8月
(イクル注:これはテスト期間。面談などはもっと早くから行っています)

-病気の経歴
モユルは二人兄妹の兄で、両親共に同居。子供二人ともスウェーデン生まれ。両親は、父親がマルムステン校で家具製作を学ぶために、2000年に日本からやってきた。出産には特に合併症も無く、問題なく済んだ。BVC(定期的に通う小児科)の記録によると、モユルはとても大人しい子だが、人とのふれ合いにおいて病気というほではない、と記されている。2007年夏に保育園で受けたアドバイスを元に、自閉症かもしれないと疑問を持った。

成長曲線を見ると、最初から頭囲が大きい。これは日本では異常な値ではない(ここを読んで、さすがに大笑い。両親も頭が大きいからねえ)。6ヶ月頃に補助無しで座れるようになって這い始めたのに対し、歩行デビューは18ヶ月過ぎと遅かった。

常に注意深く、積極的な行動をためらう。よじ登ったり跳ねたりする事に興味は少ないようだ。三歳の時点で数語の語彙と言語発達は遅かったが、言われたことはほとんど理解できているようだ。早い時点で、モユルは他の子供に興味を示さないと気付かれていた。常に決まり事を守り、細かく周囲を観察している。

水の流れを見続ける事に喜びを感じる。可動部分の無い人形や縫いぐるみには全く興味が無い。おもちゃの車がどうやって動作するのかをつぶさに観察する。ちょっとした特徴に非常に大きな興味を示し、また同じ事を延々と続け、他のことに切り替えるのが難しい。地図が好きで、道路や線路を指でなぞっていくことに熱中する。おもちゃを他の子に貸すことは全くない。

モユルは新しいことや変化に対して、すぐに戸惑い緊張する。変化の少ない安定した日常が一番良い(イクル注:とはいえ、新しいことに挑戦するという刺激も必要)。モユルの外見は年齢相応で特に問題は見受けられない。最後の検診の際には、かなり感情を抑えてはいたがアイコンタクトは出来ていた(イクル注:先生と一緒に遊んでみた)。運動力検査では問題は見受けられない。

-診断
自閉症シンドローム

-モユルに必要な事柄
保育園でも継続的な指導と、大人による補助が必須。日々の良い成長の為に、モユルは同年代の子よりも両親の補助が必要である。今後数年先、おそらく成年期まで、適切な指示と世話によるサポートが必要である。

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これはPEP-R(Psycho- Educational profile revised i swedish version)という発達検査における評価書類。知覚、運動能力、目と手を同時に操る能力、認識力などについて構成されています。全部書くと大変なので、簡潔にまとめてみました。各項目に記されていることは出来たことのみ。(合格項目および、もう一息だった発達段階と認められた項目。おそらく、出来ない事は意図的に書かれていない。)。もう一つ、ADOS(Autism Diagonostic Observation Schedule)という診断テストも受けていますが、そちらも書き出すと大変なので、とりあえず今回はパス。

以下、書類の内容。
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2007年5月に、2回のテスト(中5日)。ほぼ4歳(47ヶ月)。

テストの環境下での振る舞い。
(イクル注:安定した日常生活とは異なり、モユルにとってはストレスを感じる状態)

モユルは目を合わせることを避ける子で、診断初日はテスト素材(おもちゃなど)に対して興味を示さず、まずパパに試しにやらせるほどで、何かを示す際には、パパの手を使って指差していた。モユルはスウェーデン語は話せないが、2-3語文の日本語を話せる。パパの問いに答えられるが、瞬時では無い。

テスト2日目、モユルは前回よりもオモチャなどに興味を示し、自分で取りに行く。モユルは試験官に対して一定の壁を設けているが、パパとのやり取りはすごく楽しんでいるパパは言葉や表情が非常に豊かで、面白い方法でモユルがテストを理解できるようにしていた

-Imitation 模倣
他の者が話すことを繰り返したり、やったことを真似してみる能力。

16項目中、3項目が合格。2項目が発達段階。猫や犬のぬいぐるみを用いて鳴き声の真似が出来た。もゆる自身の振る舞いや、音の世界を持っている


-Perception 知覚
音に対する反応、目の動き、決まり事を理解する、色や大きさを判断する能力。

13項目中11項目が合格。他には一つだけ発達段階。移動したコップの中に隠されている物をちゃんと見つけること(追随)が出来た。


-Finmotorik 微細運動
手の扱いと、物を掴む能力。

10項目合格/16項目中。瓶の蓋を開けられた。シャボン玉を吹けた。複数の木のパーツに糸を通せた。ハサミを扱える。


-Grovmotorik 粗大運動
腕や脚、筋肉を使った運動能力。

13項目合格/18項目中。交互の脚を使って階段を上れる。椅子に一人で座れる。ボールを置いたり、運んだり、投げたり、蹴ったり出来る。コップの水を一人で飲める。右足が利き足。


-Öga-hand integration 目と手の協応
物を積んだり、一緒にまとめたり、穴に糸を通したり、色合わせなどの、目と手を同時に使う能力。

5項目合格/15項目中。3項目は発達段階。正しい大きさに当てはめるパズルが出来る。同じ文字を選び出したり、ブロックを積み上げたり、箱の中にブロックを入れたりも出来る。


-Icke verbal kognition 言語理解
言語の理解力検査。ここでは言語に依存しない課題を、どの様にこなすかを見る。

10項目合格/26項目中。5項目が発達段階。人形の体の部位を示すことが出来る。モユルは大小を表現でき、色の見分けも素早い。隠れている物を見つけられる。二種類の指示に従って、仕分けることが出来る。


-Verbal kognition 言語表出
コミュニケーションの元となる、身振りや話し方などの表現力。

4項目合格/27項目中。2項目が発達途中。大きさの違いや、色を(日本語で)表現できる。身振りも加えられる。


-要約
3歳11ヶ月(テスト時)のモユルの発達が遅れている事を、テスト結果は示している。合格した項目だけで見ると、約2歳相当で、発達中の項目も含めると、一般的な2歳半ほどの子供と同じである。知覚は年齢相応で、視覚、聴覚による理解度も良い。

会話と模倣力の発達が一番遅れているが、パパとの会話は成り立っている。自宅以外では日本語に触れられない環境にいることは考慮できる。模倣テストの際、モユルからの積極性はあまりない。彼なりの音や仕草で試験官の振る舞いに反応したりと内容は理解しているが、自発的に真似をすることはない。

モユルはとても慎重な子で、他の大人と目が合うのを避け、あまり興味を示さない。パパと一緒に楽しめる能力は力になる。モユルの成長を促進するために、彼には補助が必要である。しっかりと整った教育環境の元で、モユルの特性を養える指導をすることを推薦する。

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これがモユルの発達度を見るグラフ。横に一本引いてある実線が検査時の年齢(この線周辺なら一般的な値になる)。黒丸で引かれている折れ線が、合格項目から判定された検査時の発達度。白丸の破線は発達段階(もうちょっとで合格域)を加えたもの。2歳相当の発達度と判定されました。

この様に、一部が突出したり、極端に低い値になるのは自閉症児の特徴です。普通に優秀な子や、ちょっと発達が遅れ気味の子の場合は、どの値も同じくらいになるそうです。モユルの場合は、模倣力が1歳児並みに低く、逆に他の発達度合いと比べると知覚がやたらと高いのが良く分かります。

現在のモユルはこの時よりもずっと成長していると思うけど、適切なトレーニングは必要でしょう。これらを踏まえて、今度は障害手当(補助がもらえる)の申請準備を始めました。


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2008年03月10日 コメント (4)

自閉症センターへ行く。

家族みんなで、ストックホルム市内にある自閉症センターへ行ってきました。

注:初めての方や、ご存じない方へ。息子のモユルは自閉症(参考リンク)なのです。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

エレベーターホールで。水槽ではないけど、チーちゃんは夢中。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

ストックホルム南病院の別館に自閉症センターはあります。僕たちが向かったのはその中の幼児向けの場所。他にも10代の子向けのエリアとか、アスペルガー症候群の子対象のエリアなどがあるみたいです。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

待合室で。レジスターのオモチャが気に入った様子。帰宅してからも、またこれで遊びたいと何度も言っています。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

今回の訪問の目的は、今週末から始まる「自閉症の子供を持つ両親クラス」の先生との顔合わせをし、説明を聞くこと。もちろん我が家の状況を話したりもしました。ネット上でスウェーデンでの体験を紹介していることも伝えておきました。

モユルの緊張を少しでも解くために一緒に遊んでくれました。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

これまでモユルはシャボン玉に触れることが出来なかったのだけど、初めて自分の指先でツンッと、シャボン玉を割ることが出来ました。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

びょーーんと伸びるバネのオモチャでも遊ぶ。僕がもう一人の先生と話している間に、モユルたちはずっと遊んでいるだけで終了。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

すぐに退館しても良いんだけど、廊下には随分と楽しそうな物が並んでいるので、そうはいきませんね。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

ハンドルさばきもなかなかです。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

外に出る前にトイレに寄る。ちゃんと点字も施されていました。

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2008年03月20日 コメント (11)

両親クラスが始まる。

先日からはストックホルムにある自閉症センターで、自閉症の子供を持つ両親向けのコースが始まりました。クラス名は「First Step 始めの一歩」。その名の通り、自閉症について学ぶ講座です。

注:初めての方や、ご存じでは無い方へ。息子のモユルは自閉症(参考リンク)なのです。

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カメラ: Hasselblad 203FE
フィルム: Kodak 160VC
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 110mm F2

自閉症とは何か?自閉症の症状、自閉症の子の振る舞いなどの基本的な知識の勉強をして、その中で参加者同士の意見交換や、お互いの置かれている環境について話したり、子供への新たな接し方を教わったりしています。

自閉症についての研究は現在も進んでいて、たった10年前に言われていたことが、今では内容が変わっていたりするそうです。よって古い文献を読むときは要注意(もちろん全てではない)。

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カメラ: Hasselblad 203FE
フィルム: Kodak 160VC
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 110mm F2

今回の講座参加者は全6家族。両親二人で参加している人もいれば、ママだけ、パパだけの者もいます。

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カメラ: Hasselblad 203FE
フィルム: Kodak 160VC
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 110mm F2

初日はお互いの自己紹介から始まりました。子供の写真を見せながら、家族のことや、保育園のこと、症状について等を話しました。当然ながら、参加者の生活環境、子供の症状の程度は皆違います。

自閉症の子もいれば、アスペルガーシンドロームと診断された子、自閉傾向の子、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と自閉症の子、ダウン症と自閉症を併せ持っている子の親と本当に様々です。

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カメラ: Hasselblad 203FE
フィルム: Kodak 160VC
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 110mm F2

なんとなく悲観的な人がいるんじゃないかと思ったりもしていたのだけど、皆とても前向きに考えられていて、それぞれの子供の事を話すときは、「こんな事が出来るんだ」とか、「こういう素敵な事をする」、「面白いでしょ」と、とても楽しそう。

もちろん診断を受け始めた当初は、そうではありませんでした。

なんでうちの子は他の子と違うんだろうとか、ネットで調べていたら(ネットの有用性は皆が述べていた。同じ悩みを抱えている人や情報を見つけやすいから。ちょっと前だったらこうはいきませんからね。)、段々と子供の事が分かってきて涙が止まらなかったという辛い時期の話、周囲の理解がうまく得られなかったとか、保育園を6つも転園してやっと今に至っているという人など様々です。この辺はどこの国でも同じでしょうね。

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カメラ: Hasselblad 203FE
フィルム: Kodak 160VC
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 110mm F2

朝9時から12時半まで全5回のコースは(会社をやすんだり、子供を預けて参加できるように、ちゃんと手当ての申請が出来るんです。育児手当や休業手当とは別の特別手当て。)講義の時間だけではなく、数人の親たちでディスカッションする小課題とかがあって、結構気が抜けません(笑)。ドッと疲れるけど、勉強になるのでなかなか有意義です。

そうそう、ちゃんと宿題(当然スウェーデン語)も出ます。これが意外と大変。だけどモユルの事をより良く知るためにも頑張らないとね。

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2008年03月21日 コメント (7)

権利

今日も自閉症センターへ行ってきました。今回は僕たちの担当者との面会。どの様な機関かという話から、発達障害児を持つ親へのサポート、得られるサービスについての説明が行われました。

まだ内容を精査していないけど、軽く見ただけでもやっぱり充実しているなあというのが最初の印象。

注:復習がてらブログに書いていますので、あくまでも参考程度にご覧頂けると幸いです。日本語での正確な用語が分からない言葉もありますので、その辺を考慮してくださいね。内容もかなり僕の解釈で簡潔に書いていますので、勘違いもあるかもしれません。「訓練」という表記も合っているのかちょっと分からない
注2:初めての方や、ご存じでは無い方へ。息子のモユルは自閉症(参考リンク)なのです。

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カメラ: Hasselblad 203FE
フィルム: Kodak 160VC
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 110mm F2

自閉症センター
僕たちが出入りしているのは6歳までの子供が専門の部署。作業療法士、医療カウンセラー、言語療法士、理学療法士、小児精神科医、特別教育教員などが一つのチームとして在籍しています。リストを見ると全部で40人くらい。

ここで得られること。
-コミュニケーションの訓練(イクル注:自閉症の子が一番苦手とする事です)
言葉、自分の気持ちを表現する、他の子が言っていることを理解する力の育成など
-社会性の訓練
相手の目を見てやり取りをすることなど、日常生活に関すること。
-新しいことを知る練習
新しいことに興味を持ち、それを伸ばす
-遊び
ルールのある遊びやゲームをする練習。
-ADL(イクル注:何の略か不明)
食事、睡眠、衣服の脱ぎ着やトイレなどの訓練
-運動
バランス力の向上、目と手を統合する力、這ったり、飛んだり、登ったり、ボールで遊んだり、描いたり、切ったりする訓練

これらのサポートを必要だと思ったら、もしくはそう判断されたら、その子供に合わせて、いつでも受けられる「権利」があるのだそうです。スウェーデンではこれらの訓練をハビリテーションと言っています。リハビリテーションは怪我や病気からの機能回復訓練ですが、ハビリテーリングは機能を伸ばすと解釈すれば良いのかな。

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カメラ: Hasselblad 203FE
フィルム: Kodak 160VC
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 110mm F2

先ほどまでの内容は当事者の子供向けだけど、ちゃんと家族へのサポートも行われます。
-両親へ
子供を助けつつ伸ばしてあげられるような接し方の勉強だけでなく、様々な発達障害の知識を学ぶ勉強会、講座も企画されています(自由参加)。リストを見たら半年で70講座くらいあった。
-兄弟へ
さらに兄弟姉妹が自閉症への理解を深めるためのサポートも。(イクル注:親の注意はどうしても障害を持った子に向きがちなので、兄弟へ接する時間がおざなりになりやすいと聞きますので、とても良いことだと思います。)
-学校へ
子供の通う保育園や学校への専門家の派遣、サポート、教員教育など

当事者だけではなく、関係者も各種サポートを受ける「権利」があります。保育園はモユルを受け入れ続けるための補助金も申請します。

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カメラ: Hasselblad 203FE
フィルム: Kodak 160VC
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 110mm F2

発達障害を持つ子と両親が受けられるサービス(法律)についても説明を受けまました。モユルには必要ない項目もたくさんあるけど、モユルよりもっと症状が重い子を持つ親には本当に心強いでしょう
-相談
-個人サポート(心を通じ合える関係を作るのが非常に苦手な自閉症の子には大事なサポート。友達の様に接してもらえる。社会性の訓練にもなるはず)
-介添人(例えば、世話を手伝ってもらうとか)
-短期滞在サポート(子供を預かってくれる。疲れ切ってしまった両親が休む時間を得ることができる)
-住居(必要ならばその子供/家族に適した場所を用意)
等などたくさんの項目。

必要な事を要求できる「権利」が定められています。

例えば僕が知った話を一例とすると、こんな事が。
筋力が低いことから字を書くのが苦手な子がいたとします。学校でみんなと一緒に座って学んでいる中、その子が字を書くのをサポートする要員も一緒に配置されるんです。これは凄いことだなと思います。指が上手く動かせないからといって、学校へ行くのを諦める必要がないんです。

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カメラ: Hasselblad 203FE
フィルム: Kodak 160VC
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 110mm F2

他にもたくさんの情報が詰まった冊子をもらいました。
色々なサイトの情報から、医療サービス、子供の成長に伴って必要になってくる項目とか、たくさんの補助についての説明も載っています。

通院の為のタクシー代の援助とか、駐車許可証くらいは日本でもある事だけど、個人に合わせた家の改装費用(分かりやすい点ならエレベーターの設置とか、車椅子でも出入りし易い玄関など)の要求も当然の「権利」だし、車だって必要ならば買い換えられるでしょう。他にも驚いたのは四歳から18歳までのオムツが必要な子(障害を持った子)のオムツ代まで全額サポート。僕は想像もしない事案でしたが、重い障害の子の両親にとっては切実な問題でしょう。

どうやら、健常者と比べて別に必要になることは全てサポート対象になるみたい。

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カメラ: Hasselblad 203FE
フィルム: Kodak 160VC
レンズ: Carl Zeiss Planar FE 110mm F2

色々と見て、大きく実感したことを挙げると、
「金銭的負担が全く無い」と言っても過言ではないくらい。

上記してきた様に必要経費の補助もあるし、各種サポートは無料(たぶん)。さらに看病/世話の為の特別な手当ても用意されています。病気の内容、症状、看護の必要度によって額が変動するのだけど、特に重度の子の場合、最高額はなんと15万円/月(書くべきか悩みましたが、やっぱり具体的な事が分かった方が良いと思って記述。注:為替レートによって換算額は変わります。また、モユルは重度との診断は受けていません)。そして、それが病状などによって、3/4、1/2、1/4と減額されていきますが、小さな子供がいる家庭には比較的大きな補助額になるそうです(世話に必要な負担が大きいから)。支給額に納得がいかない場合はクレームを付ける「権利」もちゃんと明記されています。最高額で足りない場合もさらに要求可。

僕たちもこれを申請中で、「頂ければ御の字」というくらいに考えてしまうのだけど、モユルを診断した先生や、自閉症センターの担当者たちは、「遠慮せずに、私たちにはこれだけ必要なんだ」と要求して良いんだと言われました。日本だったら、あんまり要求しすぎると、お金に卑しいと思われかねないと言うと、「あなた達はこれらを受け取る当然の権利があるのだから、恥ずかしがったり遠慮する必要は全く無い」のだそうです。

確かに非常に多くの事を犠牲にしながら、世話や看病をしているのだから、それに見合ったサポートを得る資格があるのでしょう。モユルはそこまで超大変な子とは違いますが、重症児の看病の為に仕事を辞めなければいけない人(逆もある。仕事をしたいのに出来ないというケース)、寝る時間さえも見つけるのが大変な人でも、他の心配事をせずに看病にだけ力を注げますよね。

福祉社会の理想論として、こういう環境が述べられそうだけど、それが実現されているのを身を持って知り驚きました。モユルのお陰でこういう事を知る機会を得られたのかな。健康で何も心配の無い子と一緒なのが一番の幸せなのだけども、障害のある子を持ったとしても、同じだけの幸せを方法は違えども共有できるように考えられていると感じました。

もう一つ追加。スウェーデンでは公共サービスを受ける際、必要ならば通訳の申請をする事ができます。それも無料。モユルの診断が出るときなど大事なときには、やっぱり助かります(特に専門用語など)。学校の中で家具の話をしているならまだしも、病院でいきなり病理学の話になったら分からないって(笑)。言葉の問題で病院へ行く機会を失うことも減るでしょうね。

ごちゃごちゃして読みづらいかもしれませんが、 ちょっとやり過ぎ すごいぞスウェーデンというお話でした。ついでに今日の面談の復習+かずえママの勉強用とします。写真は天気の良かった数日前に撮影。滑り台で遊ぶこども達。←見りゃ分かりますね(笑)。

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2008年03月23日 コメント (21)

言葉の難しさ。

息子のモユルは自閉症という発達障害を抱えています。特に見た目では全く分かりません。遊んでいる姿を見ても、障害を抱えているなんて思いも付かないかもしれません。自閉症の子では極々ありふれた姿です。

しかし、その子の親に対して「大丈夫よ、普通だよ。頑張れば治るわよ」と言ってしまうのは、非常に際どい発言でもあるんです。実際、よく言われる言葉です。もちろん、激励の意味で言ってくれているとも分かりますし、単に無知なだけとも理解できます。でも、自閉症は「治ることは無い障害」なのです。人によっては、あまり良い気分がしない言葉にもなってしまいます。

僕はいちいち、そんな言葉で傷ついたり、気にし続けるような事は無いと思いますが、このブログは現在、障害を持った方やご家族、関係者の方からもご覧頂いています(そう思っています)。その事もあって、僕個人の考えをしっかりと示しておきたくなりました。

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兄妹仲良く。
カメラ: Hasselblad XPan
フィルム: Fujifilm Press 800(品質保持期限切れ)
レンズ: Hasselblad 90mm F4.0 もしくはHasselblad 45mm F4.0

なぜいきなり、こんな話をし始めたかというと、先日のエントリーで頂いたコメントをきっかけとして、ものすごく考える事があったからなんです。詳しくはそのコメントへの僕の返信をご覧頂ければ良いと思いますが、もっと多くの方にも気付いていただけるようにと思って、ここにも書いてみることにしました。

ひょっとしたら、「現実が分かっていない」とか、「理想論でしか無い」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、書く事にします。

注1:頂いたコメントの一部を拝借していますので、実際のコメント内容とはニュアンスが異なることをご了承ください。あくまでも、今回のブログのネタとして使っています。詳しくはその原文をご覧頂くのが一番だと思います。
注2:このブログエントリーの内容は基本的に、先天的な障害を持った者についての視点で書いています。
注3:ご指摘などによっては、今後も内容を書き直す可能性があります。

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楽しそうです。
カメラ: Hasselblad XPan
フィルム: Fujifilm Press 800(品質保持期限切れ)
レンズ: Hasselblad 90mm F4.0 もしくはHasselblad 45mm F4.0

>>うちの母は、『うちの子は、普通の子です。普通の学校に通わせます』と言い
>>切り(養護学校ではなく)普通の小学校に通わせたそうです。

昔は特に劣悪な環境だったと聞きますが、今でも環境が良くなかったり問題があるところもあるかもしれません。さらには普通学級だとしても理解が足りないところもあるでしょう。でも、僕が言いたいのは養護学校に通う子も「普通の子」だし、養護学校も「普通の学校」だということ。世間一般的にはそう思われていないのが現状かもしれないけど、養護学級は、普通の学校でサポートしきれない、他の子にはない特徴(世間一般にはそれを障害と称します)を持った子を適切にサポートし、伸ばしてあげられるような人員と、そのための環境がある場所です。

ついでにもう一つ。
もし、しっかりしたサポートが望めないような地区で、何年間も友達もほとんど無く、周りからの理解も得られない環境で、ただ授業に参加しているだけという無駄な時間を過ごす可能性が高いようなら、僕は同じ様な境遇の子がいる養護学級へ行かせることを選ぶでしょうね。

学歴に残ると子供の将来が心配だ。とか、普通の学校に行けなくて可哀相だ。という様な意見が出てくる可能性もあります。(「今の仕事を続けられなくなる」というような事はとりあえずカット)

でも、僕はこう考えます。本当に子供の幸せを考えたら、それらは全く関係ありません。問題はそんなことではなく、親がどれだけサポートしてあげられるか、子供の良い点、可能性を伸ばしてあげられるかが一番重要じゃないでしょうか。健常者の子だって全く同じですよね。障害を持った子供の親には、その負担が多少なり増えるだけのことです。

たとえ重度の障害を抱えていて何も出来ない子だとしても、周囲からはそう見えなくても、その子にとってはそれが一番幸せな人生です。その子が安心して生活できる様にサポートするのが親や社会の役目ですよね。

まだまだ書けそうだけど、これはここで終わり。

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ジャンプする二人。
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フィルム: Fujifilm Press 800(品質保持期限切れ)
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>>(兄は)社会人としてやっていけてるし、

これも際どい言葉だと思います。障害を持っていても「社会人」ですし、補助が無いと生活できないとしても「社会人」です。

日本では学校を卒業して就職すると「社会人になった」と良く言いますが、正しい意味での「社会人」は、社会を構成する一員の事。要するに障害の有無に関わらず、全ての人です。もし将来、仮に僕の息子のモユルが自立してやっていけないとしたら、それは「社会人では無い」のでしょうか?そんな事ありませんよね。

僕が理想論、やけに前向きな考え方なのかもしれませんが、皆さんはどう考えられますか?

でもね、極端な話、障害を持った子たちは考え方も全然違う子が多い(実際そう。時々、その中から天才と言われる人が現れる)わけだから、僕たちが言う「幸せ」の解釈だって全く違う可能性もあるんですよね。
たとえば自閉症は1000人に一人から二人の発症率と言われています。超特別な限られた人なんです。僕たちなんて、彼らから見たら世間一般多数の凡人でしかないかもしれません(笑)。僕がこんな風に、早く寝なきゃなんて思いつつ、ブログ上でブツブツ語っているのも、ばかばかしいって思われていたりして(笑)。


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2008年03月24日 コメント (18)

母からのメール。

ストックホルムはこの冬最高(たぶん違う)にも思えるくらい、キーンと冷え込んでいます。寒すぎて雪も降りません。明日の予想最高気温は2度。最低気温はマイナス12度だって。

さて、昨日のエントリーへは大変多くの反響を頂き、正直驚きました。色々な方のご意見を伺えて大変参考になりました。ありがとうございます。そんな中、僕が特に意見を聞きたいと思っていた母からメール(手紙じゃなくて、メールというところが現代的ですよね)が届きました。非常に参考になる内容でしたので、皆さんにもご覧頂きたいと思います。(注:僕の独断で一部を削除、もしくは編集しています。)

母の事を軽く紹介すると、今から約40年前に重症障害児(知的障害と肢体不自由の重複)の施設で保母として働いていた経験があります。コメントの最初からとても考えさせられる内容でした。

先日のエントリーに頂いたコメントへの、母の意見から始まります)
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お母さんがとった選択肢、今でもまだまだそうですが、30年前にということは、なんと勇気のいること。世間からはほとんど非難しかされないような選択だったと思います。

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ビスケットで休憩中
カメラ: Hasselblad XPan
フィルム: Fujifilm Press 800(品質保持期限切れ)
レンズ: Hasselblad 90mm F4.0 もしくはHasselblad 45mm F4.0

お母さんは確信をもってその道に進んだとは思えません。どんなにか悩み、考えて選択したのだと思います。そしてその後も、いつも悩みつづけられたと思います。この選択が正しかったか、と。周りのサポートがどれだけあったのか、30年前といえばほとんど孤軍奮闘状態だったと思います。この方法で、子供が幸せかどうだろうか悩み苦しまれたと思います。

正解なんてあるわけないし、失敗したということもたくさんあるはず。生きているといつも状況が同じなんてことはあるはずがなく、時々刻々、いろんなことが変化していきます。それにひとつひとつ考えて最適な対応していくのは不可能です。きっとそのお母さんは何か大きな信念(今までの生き方から得たこととか、信仰、教育理念)をお持ちだったのかもしれません。

そういうお母さんに頭が下がります。

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寄って撮ると迫力があるね
カメラ: Hasselblad XPan
フィルム: Fujifilm Press 800(品質保持期限切れ)
レンズ: Hasselblad 90mm F4.0 もしくはHasselblad 45mm F4.0

確かに養護学級という選択もあるけど、本当にどっちが良いかということは言えないと思います。それぞれいろんな道を歩んで来られた親子たちの苦悩と、経験の蓄積があるから現在の日本の児童福祉がやっとここまで来れたんだということを忘れてはいけないと思います。

多分、スウェーデンも児童福祉の萌芽期には、大変な苦労をしてきた親子たち、理解者たちがいたのだと思います。と、良く知りしないくせに偉そうに書いてしまいました。 イクル注:僕もよく知りませんが、僕の知っている限りでは、スウェーデンの整った公共福祉システムは、日本よりも一世代(25年くらい?)早く始まっています。障害者へのサポートはどうなのか、機会があったら調べてみたいです。

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大胆な遊び方を楽しむミチカ
カメラ: Hasselblad XPan
フィルム: Fujifilm Press 800(品質保持期限切れ)
レンズ: Hasselblad 90mm F4.0 もしくはHasselblad 45mm F4.0

たった50年前、障害を持った子供、特に重症の子は日本では家の中で隠されていて(イクル追記:納屋や部屋の片隅に隔離されていたそうです)、食事を与えられるだけのような存在でした。おそらく日本で最初にそういう子供達を保護し、お母さんを助けた(そういう子供を産んだだけでも離縁される時代)のが私の勤めていた施設です。創設者夫妻が自宅を開放して始めました。

私の勤めていた時代(創設から10年後)でもまだ、障害をもっていることで家族から捨てられた子供達は大勢いました。そして、保母という仕事は、最低の仕事と見なされ、汚れる汚い仕事、お嫁に行けなくなる仕事と世間では言われていました。

そんな不遇の時代に、お母さん方とそこで働いている方々の、世間と行政との戦いの末、現在のような体制が出来てきたのです(まだ不備がいっぱいあるけど)。ここで「子供達」と書いていないのは、子供達は障害をもっていて声を上げられないからです。だからお母さん方の奮闘とその声は子供の魂の声で力強い声なんだと思います。


メール引用ここまで。
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いかがでしたか?
僕が「言葉の響きがどうこう」程度の問題提起ができるのも、こういう方々の苦しみと努力があったからこそなんだと改めて認識しました。

明日からは、(たぶん)親ばかブログに戻ります。

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2008年03月25日 コメント (12)

楽しそうな二人。

今年のイースターは雪でした。しかも吹雪の様相。外で遊ぶのはちょっと辛いので、近所のショッピングセンターへ出かけてみました。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

ここは以前にも紹介したことのある場所。しかし、考えることは皆一緒で大変な混雑でした。

 

カメラ: Sanyo Xacti CG6

遊んでいるモユルを撮りました。一分半の長さです。おそらく自閉症についての知識がある方は、「こんなにたくさんの子がいる所で遊べるの!?」と思われるかもしれません。はい、やっと遊べるようになってきました。ただし、ここまでなるのに一年はかかっています。それに今でも機嫌が悪いときだったら、たくさんの子供を見ただけで帰ると言いだすかな。

緊張して遊んでいるのが分かります。帰ってくると、ドッと疲れが出ることもあるほど。でも、やっぱり笑顔を見せてくれるのは嬉しい。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

こちらはミチカ姫。このワンちゃんを抱えたり、押して回るのが好き

カメラ: Sanyo Xacti CG6

こちらも同じく1分30秒ほどのビデオ。あくまでもマイペースなチーちゃんをご覧ください。僕の様子を見つつ(止められるか、OKなのかを見極めようとしているのかも)遊ぶのが可愛い。しかし、そこは遊ぶ場じゃないんだけど。。。

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カメラ: Sanyo Xacti CG6

ちょっとそこで休まないでくださいよー(笑)。

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